時代の流れ [あれこれ]
生放送の現場にディレクターを派遣することになった。少ない人数での生対応なので、ディレクターもニュースなどの原稿作成はもちろん、編集も自分でオペレートしなくてはいけない。
編集の主流がノンリニアである昨今だが、生放送の現場では素材はまだテープである。(夏の高校野球など、全国の多くの局が集中し、素材を共用することが多い現場を始めとして、すべてがサーバー化される時期も近いと思うが・・・)
生放送の現場では、テープ素材をデジタイズする時間などないため、スピードを要求される編集はリニアが重宝される(報道ではファイルベースが主流になっているようだが)。頭からダビング作業で作ってゆくリニア編集は、後戻りしてやり直す時間などない1発勝負であるのは言うまでもない。つまり、内容のメモを取りながらの素材プレビューはもちろん、作品全体の計画性、構成などを最初に考えてから作業に入る能力が求められる。
私のところもすでにノンリニアに移行して久しいが、この度、若い人をリニア編集の現場へ派遣するにあたって、スキルアップ勉強会を開くため、捨てずに残していたリニア編集機、BVE-910を引っ張り出してきた。
80年代から90年代、私はこの編集機を最もよく使ってきた。久しぶりに触るとなんだかワクワクする…というのは年寄りの証拠だろうか。
さて、若いスタッフにリニア編集の概念を教えてから実操作に入る。ほとんどノンリニアしか触ったことがないスタッフたちは、ダビングしながら編集するという概念がいまひとつ飲み込めないという。特にファイナルカットなどを多用している人たちは、素材の使うところを決めて繋いでゆく、という考えがなく、マスター素材の不要部分を取り除いてゆくという考えのようだ。
驚いたのは、ビデオテープに関しては、VHSすら触った経験のない者まで現れ始めている。時代だなぁと思う。
昔、完成テープにスーパーを1枚追加したいという時に、 AD君がポスプロへ完成テープとテロップ1枚だけもってきて罵声を浴びたことを思い出す。デジタル化の現代なら、そんな完成テープだけでも、それをダビングしたものを素材にして、テロップを焼いたり、HDCAMのプリリード機能を使ってテロップを入れたりすることが可能だが、アナログVTRの時代は1度ダビングすると画質の劣化がひどいため、オペレーターたちは、いかにダビング回数を減らして完パケするかを考えるのが仕事のようなものだった。
私は常日頃、機械が進歩すると、使う人間の能力が削がれて行くと考えている。たとえば、携帯電話が普及し、電話番号を記憶する能力が下がり、待ち合わせや打ち合わせをしっかりとしなくなる。このように機械に使われてはいけないということをいつも肝に銘じている。
さて、若いスタッフたちにBVE-910を触らせてみた。まだ編集できないのはもちろんのこと、思うように動かせない、止められない。後ろからIN点を指定しようと声をかける私はイライラがつのる。。。
こうして時代の流れが変わってゆく。。。と、半ば驚きを隠せないのであった。
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